Kame(b)の音楽にまつわる何か

Kame(b)の主に音楽にまつわる適当なことを記します。

ヤマハの鍵盤ハーモニカ「ピアニカP-32D」にピックアップ・マイクを付ける

イントロ

私は基本ベース弾きなのだが地元のセッションでは賑やかしで鍵盤ハーモニカ(ヤマハのピアニカP-32D)も吹いている。地元のセッションではサックスやトランペットなどのフロント楽器が居ないことが多いので変化をつけたいというのと、たまにはフロントに立って目立ちたい!という思いからである。ところで意外かもしれないが鍵盤ハーモニカは結構音量がでかい。小さいハコ(お店)ならば基本的には生音で十分である。しかしながら、以下の理由から、ピックアップ・マイクを付けてみようと画策した。ちなみに、ピアニカの「エレアコ化」とも言うらしい。

楽器から鳴る音量を落とせる

ちゃんと音を届かせるために普段から高い息圧で吹いているのだが、鍵盤ハーモニカという楽器の構造上ピッチベンドがかかることがある。まぁ通常は息圧だけではあまりかからないのだが、意図せずかかることがある。また、高い息圧で吹くと、たまにリードが貼りついて(?)音が全くならないときがある。このへんはリードの調整(あげみ調整)を行えば良いらしいのだが、結構難しそう。ピックアップ・マイクを使ってハコ(お店)のPAに接続できるなら通常時の音量(息圧)を抑えることができそう。これにより演奏レベルがあがるに違いない(願望)。

音を加工したい

バーブ・ディレイなどをかけて気持ちよくなりたい。コーラスをかけて音に深みをつけたい。フランジャーディストーションをかけて演奏を台無しにしてみたい。ちなみに、コーラスをかけると楽器の構造及びコーラスの仕組み上、加工された音はアコーディオンで複数リードを使った時の音に近くなるね。

改造を楽しみたい

もはや自己目的化。比較的価格の安い楽器なので思い切って改造できるがいいね。

なお、スタンド・マイクを使ってもいいのだけど、その場合、楽器を動かしたり吹きながらうろうろ歩き回ったりできないからやっぱりピックアップ・マイクだね。目指せマイルス・デイビス

構想を練る

上記の目的や使用形態を考慮して構想を練る。

マイクユニットの選定

現実的な候補としてはエレクトレット・コンデンサー・マイク(以下ECM)かピエゾ素子の何れか一方、又は、両方。両方をつけるのは色々と面倒なのでどちらか一方にする。鍵盤ハーモニカは打鍵音が楽器ボディに響くのでピエゾ素子だと打鍵ノイズだらけになりそうなので却下。というわけでECMを選択する。

使用形態の検討

ピックアップ・マイクをどこに接続して使用するかを検討する。最終的な接続先はハコ(お店)のミキサーとして、その間に何らかのエフェクターを介在させるのかを検討する。音の加工がリバーブ・ディレイなどの空間系だけならミキサー側で行なえるが、コーラスやディストーション等は通常ミキサーでは対処できないので別途エフェクターを用意する必要がある。そこで、ピックアップ・マイクをギター・ベース用のエフェクターに接続し、このエフェクターをハコ(お店)のミキサーに接続する形態とする。あるいは、ギターアンプに接続する。

電源の検討

ECMには電源が必要。当初、鍵盤ハーモニカ本体内にボタン電池を収容することを検討したがさすがにスペースが無いので断念。なので外付けの電源ユニットを製作する。電源ユニットは単純なパッシブな電源回路のみとする。ところで、単純な電源回路のみだと出力インピーダンスが数キロΩになってしまう。しかし、後段として想定しているギター・ベース用のエフェクターは入力インピーダンスが十分に高いのでこれは無問題とする。なお、電源ユニットにプリアンプ的なものを搭載しようとも検討したが、これは後日の課題とする。

電源ユニットの設計と製作

ECM千石電商で売っていたCM-062というのを使う。データシート的なものはこんな感じ。

CM-062
電源ユニットの回路はシンプルに上記写真のTerm1とTerm2から右側部分をそのまま踏襲する。Term1とTerm2はモノラル・ミニプラグ。出力側はステレオ・標準プラグで、電源スイッチを兼ねるようにする。電源は0006P型の9V電池を使う。バイアス抵抗は4.7kΩ、カップリングコンデンサは10μの電解コンデンサを使った(手持ちの部品から適当に選んだ)。ケースはタカチTD5-8-3Nを使った。実装すると以下のような感じ。ラグ板を初めて使ったよ。
電源ユニットの様子
このケースにクリップを付けて、ベルトに装着して演奏する。
クリップの様子

鍵盤ハーモニカ側の設計と製作

ECMの取り付け

ECMの取り付け形態としては、本体内にECMを収容する内蔵型か、トランペット用ピックアップ・マイクのようにグースネックの先端にECMを設ける外付け型が考えられる。外付け型は、本体に固定しちゃうと楽器付属のケースに収容できなくなるし、さらに脱着式にすると持ち運びに不便で脱着構造を実現するのも難しそうなので却下。なので内蔵型とする。

ECMの内蔵位置

マイクを内蔵した鍵盤ハーモニカと言えばHAMMOND PROシリーズである。これをパクろう参考にしよう。こちらのブログを参照すると、どうやらHAMMOND PROは本体内の高音側に空気室側面と対峙するようにダイナミック・マイクを配置している。ケースからの振動の影響を抑えるためにマイクはサスペンション(?)でケースに取り付けられている。こんな感じにしたいけどちょっと製作は無理そう。なので、配置位置は参考にしつつ、取り付け方法は適当に考える。

ECMの実装

ECMに極細のシールドケーブルをはんだ付けして、

ECMにはんだ付け
熱収縮チューブで保護して、
熱収縮チューブをつける
最後にホットボンドで保護する。
ホットボンドもつける
そして、このECMを、鍵盤ハーモニカの内側に貼りつける。貼り付け方法は、ひっつき虫というものを使ってみる。多めに貼ってECMを半分埋める感じ。ケーブルの固定にもひっつき虫を使う。
ECMのケース内への配置

ジャックの実装

鍵盤ハーモニカの吹き口の横に穴を開けてモノラル・ミニジャックを付ける。

ジャック取り付け用に穴あけ
ジャックを取り付けた様子
ジャックを取り付けた様子2

以上で完成

試奏

外付けのエフェクターは何も接続せず、パソコンのDAWソフトで録音してみた。肝心の音は、キンキンと高音が強調され、ふくらみのない薄っぺらい音、という感想。EQで調整すると多少よくなるけど、そもそも中低音をひろえてない感じなのでEQでの調整でも限界がある感じ。狭いケース内、しかも高音側にECMを配置しているのでしょうがないところか。ふくよかさや空気感を得るには鍵盤ハーモニカの外から多少の距離をおいてマイクを配置しないと駄目なのかも。

地元のセッションでも使ってみた。ベース用のエフェクターを接続し、その出力をお店のPAミキサーに接続。お店はそんなに大きくないので生音とPAからの音のミックスという発想でエフェクターの設定をウェットめにしてみた。なかなか良い感じでした。あぁリバーブ・コーラス気持ちいい~。

アウトロ

作ってはみたものの、セッションではエフェクターの接続とか準備が面倒であまり使わず。鍵盤ハーモニカの良いところの一つがフットワークの軽さだと思うので、その良さがなくなっちゃうのは勿体ない。しっかり準備ができる環境・現場ならいいかも。まぁ私の場合その環境・現場はなさそうなので、しばらくは使わないかな。

こちらの記事もどうぞ。

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